コム・デ・ギャルソンの哲学と川久保玲が問う自由 | 前衛的デザインの真髄

Image:Wikipedia(Public Domain)

ファッションが問いかけるもの
みなさん、洋服にはどんな思い出がありますか?
若い頃、特別な一着に出会った高揚感や、自分を変えてくれる服に袖を通したときの感動は、今でも心に残っていますよね。

ファッションは、ただの衣服ではありません。それは「自分をどう表現するか」という問いかけであり、時に人生を変える力を持つものです。

COMME des GARÇONS(コム・デ・ギャルソン)というブランドがあります。
「破壊と創造」「自由と挑戦」という明確な哲学を掲げ、50年以上にわたって既存の価値観を揺さぶり続けてきた、日本を代表するブランドです。

そして私は若い頃からコムギャが大好きで、毎月の給料を倹約して貯めては、一年に一回あるかないかの頻度でこのばか高い洋服を買っていました。それほどまでにカッコよく、大胆なまでなコンセプトに陶酔していました。

そんな我が青春のブランド。
今回この記事では、COMME des GARÇONSの歴史や哲学、創設者川久保玲の人物像を掘り下げながら、このブランドが問いかける「自由」とは何かを探ります。

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COMME des GARÇONSとは? ブランドの概要と歴史

Image:COMME des GARÇONS

ブランド誕生の背景

1969年に東京で誕生したCOMME des GARÇONS
その名前はフランス語で「少年のように」を意味し、創設者川久保玲の哲学そのものを表しています。「少年のように」とは、自由な冒険心と枠にとらわれない純粋さを象徴しています。

川久保玲の背景
川久保玲は、1942年に東京で生まれ、慶應義塾大学で哲学を学びました。在学中から「自分を表現する方法」としてファッションに可能性を感じ、卒業後に商社で働きながら服作りの道に進みます。

1969年、彼女はわずかな洋服を卸販売する小さなブランドを立ち上げました。しかし、そのデザインはすぐに異彩を放ちます。当時、女性らしさや華美さが求められていたファッションの中で、川久保玲は「黒」を基調とした無駄を削ぎ落としたデザインを提案しました。

その結果、COMME des GARÇONSは単なる服飾ブランドではなく、社会の価値観に挑む存在となりました。

COMME des GARÇONS公式サイト
https://www.comme-des-garcons.com

川久保玲と私:心酔の理由

川久保玲とは何者か?

川久保玲(Rei Kawakubo)は、1942年に東京で生まれました。幼少期から、自分自身を表現することに強い関心を抱いており、美術や文学に親しみながら育ちました。
慶應義塾大学で哲学を専攻した彼女は、大学時代に「価値とは何か」「美とは何か」という問いに深く向き合いました。この経験が、後に彼女のデザイン哲学の基盤となります。

卒業後、広告制作の仕事を経て、彼女はデザインの世界に足を踏み入れます。当初は女性向けのシャツを制作していましたが、1970年代には「性別を超えた自由な服作り」を目指し、COMME des GARÇONSを確立しました。そして、1981年にパリ・コレクションでのデビューを果たし、ファッション界に大きな革命をもたらしました。

川久保玲のプロフィール
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/川久保玲

「スタディ・オブ・コム デ ギャルソン」の一文

南谷 えり子氏著作の『スタディ・オブ・コム デ ギャルソン』には、こんな一節があります。

「全てのビジネスはクリエイションである。」

この言葉を読んだとき、私は川久保玲という人物の特別さを改めて実感しました。
彼女のデザインは単なるファッションではなく、ビジネスそのものを「創造」として捉える視点に基づいているのです。

私も広告制作を生業としていますが、この仕事は初めの頃はとてもクリエイティブに感じ、徹夜も厭わないモチベーションを発揮しますが、年齢とともに面倒臭い事が増え、若い頃のようにクリエイティブな意識で仕事が出来なくなりました。

しかし川久保玲は違います。何歳になっても、堂々と全ての仕事はクリエイティブと言ってのけるのです。その意識の高さに私は心底陶酔しているんですね。

川久保玲氏の貴重なインタビューは、VOGUE JAPANでも読むことができます。彼女の哲学や揺るぎない姿勢について深く掘り下げられています。

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「黒の衝撃」1981年のパリコレクション

COMME des GARÇONSが世界的な注目を浴びたのは、1981年のパリ・コレクションでした。
華やかさが求められる当時のパリファッション界で、川久保玲が披露したのは黒を基調としたコレクションでした。これは、従来の「明るく華やかな美」の価値観を真っ向から否定する挑戦でした。

この「黒の衝撃」は、ただのデザインではなく、ファッションを通じた哲学的問いとして受け止められました。「黒」を纏うことは、既存の価値観を否定し、自分のアイデンティティを表現する行為となったのです。

当時の若者たちに与えた影響

特にこのコレクションは、既存の価値観に疑問を持つ若者たちを魅了しました。
日本やヨーロッパでは、COMME des GARÇONSを着ることが一種のステータスとなり、「ファッションとは自己表現の手段である」という考え方が浸透しました。

私が鳥取で初めて出会ったCOMME des GARÇONS

地元の鳥取県米子市にある「STANCE」というファッションビルで、私は初めてCOMME des GARÇONSの服を目にしました。その瞬間、私の中にあった「服とはこういうものだ」という常識が覆されました。これを着こなすには孤高のプライドが必要だと当時勝手に思い込んだものです。それほどまでにカッコよかった。

STANCEはこちら
https://lisa-net.com/

硬質でありながら大胆なデザイン、黒を基調としたシンプルで挑発的な世界観。全てが私にとって新鮮で刺激的でした。しかし、学生だった私にはその価格に手が届かず、眺めるだけの日々が続きました。

初めて購入した大阪のフラッグシップ店での感動
数年後、大阪のCOMME des GARÇONSフラッグシップ店で初めて洋服を購入しました。
店内に漂う空気は、まるでアートギャラリーのようでした。店員との会話も、まるで哲学について語り合うような感覚でした。自分の手で服を選び、試着し、購入するというプロセスの中で、「これを纏うことで新しい自分になれる」という妙な高揚感を感じたのを記憶しています。

その服は、単なる衣服ではなく、自分の生き方を再構築するアイテムだったのです。

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COMME des GARÇONSの服作りの哲学

破壊と創造

COMME des GARÇONSのデザイン哲学の根幹は、「破壊と創造」にあります。川久保玲は、既存の価値観や慣習を破壊し、それによって新しい美を創造することを目指してきました。

彼女の手掛ける服は、「非対称」「意図的に崩れたシルエット」「使い古されたような素材」といった独自の美意識を持っています。それらは、従来の「美」とされてきたものに反抗し、新たな価値を提案しています。

美しさへの挑戦

よかったですね きれいだったですねと全員から評価を受けたとしますね

それはもう不安です

そんなにわかりやすいものを作ったのかと
自己嫌悪に陥ってしまう

という川久保玲の言葉に象徴されるように、彼女のデザインは「不完全さ」に宿る美しさを探求しています。不完全な中に生まれる緊張感や意外性こそ、COMME des GARÇONSの服が持つ魅力の一部です。

この哲学は、ただ奇抜なデザインを目指すものではありません。むしろ、服を通じて「美とは何か」「ファッションとは何か」を問い直す川久保玲のアプローチなのです。

服は対話の道具

続けて川久保玲はこう語ります:
「言いたいことは全部 洋服の中にあるのです」
彼女にとって、服は単なる装飾品ではなく、人と社会、あるいは人と人の間に新たなコミュニケーションを生み出す媒体です。
COMME des GARÇONSを纏うことで、着る人は自己表現の自由を手に入れ、同時に社会や文化にメッセージを発信することができるのです。

川久保玲と山本耀司:二つの「黒」の物語

1981年、同じパリ・コレクションで「黒の衝撃」を巻き起こした人物がいます。
その名は山本耀司です。
山本耀司のデザインもまた、既存の美に対する挑戦であり、川久保玲と共通する哲学を感じさせました。

山本耀司のブランドと哲学

  • 「Yohji Yamamoto」:静寂を象徴するデザイン
    山本耀司のデザインは詩的であり、物語性が強いのが特徴です。黒を基調としつつ、静けさや永遠を感じさせる服が多く、感性に訴える力があります。
  • 「Y’s」:日常に寄り添う黒
    もう少し日常に馴染むラインとして、「Y’s」では実用性とデザイン性を兼ね備えた洋服を展開しました。当時、私は「Y’s」を比較的手に取りやすい価格帯だったこともあり、頻繁に着ていました。

互いの影響と別々の道

川久保玲と山本耀司は、時に競い合い、時に支え合いながら、1980年代の日本ファッションを世界に広めました。しかし、それぞれが追求する美学や哲学は微妙に異なり、現在では異なる道を歩んでいます。

川久保玲は「反骨精神」を軸に、アートとしてのファッションを追求。一方で山本耀司は「人生と寄り添う服」をテーマに、詩的な美を体現しています。

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川久保玲の言葉

1.「創造は物事を前進させる」

この言葉は、COMME des GARÇONSの哲学そのものを象徴しています。何かを創造すれば新しい価値が生まれる。これは、ファッションだけでなく、人生においても通じる教訓です。

2.「本人の中身が新しければ 着ているものも新しく見える」

どんなに素敵な洋服でも、着こなす人がそれを受け入れられなければ、それは輝きを放ちません。外見ではなく、内面の事を指しているのだと思います。

3.「話さなくても洋服を見れば私のことが分かります」

服を通じて語られるメッセージ。それは、COMME des GARÇONSが単なるファッションブランドではなく、哲学そのものである理由です。

現代のCOMME des GARÇONSが世に問うことは何か

ジェンダーレスファッションという潮流

ジェンダーレスファッションは、「性別に縛られない服装」の提案です。
従来の「男性用」「女性用」といった枠組みを壊し、すべての人が自分の感性で服を選ぶ自由を提供します。

ジェンダーレスは単なるトレンドではなく、現代社会が多様性を受け入れるプロセスの中で生まれた必然的な流れです。性別に囚われない服は、個人の自由やアイデンティティを尊重する社会の象徴とも言えます。

COMME des GARÇONSのジェンダーレスとは?

COMME des GARÇONSのジェンダーレスは、単なる「男女兼用」という意味ではありません。それは、「人間そのものの魅力を引き出すためのデザイン」です。

性別や社会的規範に縛られない自由なデザイン。それは、個人が持つ純粋な自己を表現するための手段です。COMME des GARÇONSの服を纏うことで、着る人は「自分自身を超越する」体験を得ることができます。

COMME des GARÇONSが時代を超えてなお支持される理由

Image:Generated with Microsoft Designer

COMME des GARÇONSが50年以上にわたり支持され続ける理由は、その一貫した哲学と挑戦的な姿勢にあります。

1. 挑戦的なデザイン哲学

川久保玲のデザインは、既存の美しさや価値観を否定し、新しい提案を続けています。
ファッション界の流行に左右されることなく、常に自らの哲学を貫いている点が、多くのファンに共感を呼び起こしているのです。

2. 自由な発想のデザイン

性別や文化に縛られず、自由な発想で作られるCOMME des GARÇONSの服は、着る人に新しい感覚をもたらします。
「枠に囚われないデザイン」というメッセージが、時代を超えて人々を魅了しています。

3. アートと実用性の融合

COMME des GARÇONSの服は、前衛的なデザインでありながら、日常に溶け込む実用性も持ち合わせています。そのため、芸術的な価値だけでなく、着る喜びを提供するブランドとして愛されています。

COMME des GARÇONSは、単なるファッションブランドではありません。それは、「自由とは何か」を問いかけ、既存の価値観を壊し続ける哲学的な存在です。このブランドが持つ強烈な個性とメッセージ性は、時代を超えて人々に影響を与え続けています。

まとめ

お気に入りの洋服にはその人の個性が反映され「哲学」が宿ります。
COMME des GARÇONSはそこに「自由」というエッセンスを取り入れ、それまでの洋服の既成概念の壁を破壊しました。「破壊、即ち創造」です。

今回の記事ではまだ同ブランドの奥深さの触りしか綴っていません。
興味が湧けばいつでも「少年のように」の時代に戻れます。
COMME des GARÇONS。
それは私にとっても人生の訓示のようなブランドであり、いつまでも憧れの存在です。

参照元一覧

川久保玲 – Wikipedia
川久保玲の生い立ちやCOMME des GARÇONS設立の背景、パリコレクションへの進出についての基本情報を参照。

COMME des GARÇONSブランド公式ページ
ブランドの理念や現在の展開について。

ファッションブランド解説 – Business of Fashion
COMME des GARÇONSやDover Street Marketのビジネスモデルに関する分析を参照。

山本耀司 – Wikipedia
山本耀司の経歴やデザイン哲学、川久保玲との関係について。

「黒の衝撃」と日本のファッション革命 – Vogue Japan
1981年のパリコレクションにおける川久保玲と山本耀司のデビューとその反響について。

CDG FREAK
川久保玲の名言について。


プロフィール背景画像
TOMO広告ディレクター・デザイナー
【著者プロフィール】
名前:TOMO
性別:トランスジェンダー
職業:広告制作全般

広告制作(グラフィックデザイン・映像制作)歴20年のガジェット好きです。 2021年2月より「ガジェットマニアZ」を運営開始し、ガジェットに関する記事を発信しています。最新の技術や製品に触れながら、多くのガジェット開発者やユーザー様と信頼関係を築き、楽しみながらガジェットの情報発信をしています。他にもファッション・キャンプ・登山・ダーツ・料理(調理師歴8年半)・オーディオ・ホームシアター・文房具・ゲーム好きと多趣味です。

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