HIFIMAN ANANDA NANOを購入。高次元の音質を評価・レビュー!

少し前までピュアオーディオを極めるために道を突き進んでいた筆者でしたが、値段と音のバランスに悩み苦しみ、そしてマンションという環境上機材の性能をフルに発揮できないというジレンマで道を引き返し、主要のコンポーネントを全て売り払った過去があります。

そして暫くは音楽に情熱が持てず、聴くには聴くが、今までのそれとは全く別で「リスニング」という感覚では聴いていませんでした。

そんな中縁あってMarshall Monitor III A.N.C. に出会い、ワイヤレスながらその音質に感動し、再び音楽との向き合い方に真剣に取り組むようになりました。

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「何を持って究極の高音質とするか」その答えはAKG K812との出会いによりひとつの答えにたどり着いた様に思います。この音の持つポテンシャルは底知れぬものがありました。

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やっぱり音楽が好きで、全てを捨て去ってもその思いは振り切れず、NOMUSIC NOLIFEのよく出来た言葉が脳裏をよぎった時、私は再びヘッドホンを力強く手に取ったのです。

そうして、中国のハイエンドオーディオブランドであるHIFIMAN(ハイファイマン)のヘッドホンがとても気になり、各所の明るいレビューが後押しとなり、HIFIMAN ANANDA NANO(ハイファイマン アナンダ・ナノ)の購入に至りました。

今回レビューするのはHIFIMAN(ハイファイマン)の「ANANDA NANO(アナンダ・ナノ)」です。

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HIFIMAN ANANDA NANOとは

HIFIMAN(ハイファイマン)は、2007年にアメリカでブランドが誕生し、その後中国に拠点を置いて活動しているオーディオ機器ブランドです。主にヘッドホン、イヤホン、アンプ、携帯音楽プレーヤーなどを製造しており、特に「平面磁界型(プラナー型)」ヘッドホンで世界的に有名です。

HIFIMAN ANANDA NANOは、HIFIMANのハイエンド~ミドルエンドのヘッドホンであり、定価10万円近くですが、他社の15〜20万円クラスと張り合える音質と評価され、非常にコストパフォーマンスに優れたヘッドホンです。

その最大の特徴は「平面磁界型ヘッドホン」であるという事です。
平面磁界型ヘッドホンはその構造上音場が非常に広く、解像度が高いという特徴があります。
そしてHIFIMAN ANANDA NANOは従来の平面磁界型からさらに以下の点が進化しています。

ステルスマグネットの採用

従来のマグネットは音の波に反射や回折による干渉を生じさせていましたが、HIFIMAN ANANDA NANOの「ステルスマグネット」は特殊な形状により音の流れを阻害せず、より歪みや濁りの少ないピュアなサウンドを実現しています。

ナノメーター厚の極薄振動板

製品名の「NANO」に由来する技術で、振動板がナノメートル単位の極薄設計となり、従来よりも高い解像度と繊細な音表現が可能になっています。これはHIFIMAN独自の新技術です。

HIFIMAN ANANDA NANOのスペック

■ スペック
ドライバー構成メーカー情報なし
インピーダンス14Ω
音圧感度94dB
再生周波数帯域5Hz~55kHz
本体重量約419.6g
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HIFIMAN ANANDA NANOの第一印象レビュー

パッケージですが、ダンボールにシールでグラフィックが貼ってあり、ちょっとワクワクしないデザインです。せっかくハイエンド級であるならもっと凝ってもよいのではと思いますが、HiFiMANのヘッドホンはどのランクもこの様なデザインのようです。無駄を省くコンセプトという事でしょうか?

外箱の中には亀の甲羅のようなヘッドホンケースが出てきました。これ自体はとても質感が高いのですが、このクラスのヘッドホンを家から外に持ち出すことは無いので、私には不要ですね。

ヘッドホンケースから本体を取り出してみたところ、結構デカい!と言うのが第一印象です。
AKG K712 Proより明らかに縦に長いです。

質感はほぼメタルに覆われたヘッドホンで質感が高く、ヒンヤリ冷たいヘッドホンです。デザインは個性的なので好みが別れる所だと思います。メタルを多用している割にはパッと見の高級感はそんなに高くないのですが、私はそのデザインとしっかりとしたビルドクオリティの質実剛健な質感が気に入り、所有感を感じることが出来ました。

HIFIMAN ANANDA NANOの装着感

バカっと両サイドが開き、ベタっと耳に挟む感じで大雑把にかぶる感じです。少なくともAKG K712 Proの様なしっとりとした被り心地では無いです。

ただし重量の割には重さを感じさせず、耳をしっかり包み込むので嫌味はなかったです。
また、長時間つけても痛みなどは発生せず、大雑把な被り心地の割にはその辺りは不思議なヘッドホンだなと思いました。

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HIFIMAN ANANDA NANOの音質レビュー

【試聴環境】
USBケーブル:FURUTECH GT2
USB DAC:Fiio K7
再生アプリ:AUDIRVANA
音源:qobuz
ケーブル:ノブナガラボ 霧降
比較対象:AKG K712 Pro
試聴音楽:久石 譲/SONGS OF HOPE:THE ESSENTIAL JOE HISAISHI VOL. 2
ダイアナ・クラール/ターン・アップ・ザ・クワイエット

取り敢えず毛布にくるんで20時間ほど放置でエイジングしてみました。
(メーカー推奨値は150時間のエイジングです。)メーカーがエイジングの指示を提示するなんて珍しいですよね。

エイジングの効果は人それぞれで、このヘッドホンに関しては5時間で音が変わったという人もいれば、20時間、50時間で音が変化したという人もいてバラツキがあったので、私はひとまず20時間を区切りにして聴いてみました。

低音はスケール感があり

実際の音質ですが、第一印象は予想とは裏腹に音が割と太く、音楽をダイナミックに聴ける感じがしました。

低音は程よくあり、沈みこんで深みがあります。タイトながらウネリのある低音でベースやウッドベースがとても豊かに聴こえます。
大きな振動板がとてもレスポンス良く反応し、収拾もとても速いのでキレの良い低音が楽しめます。決して重低音ではないのですが、ボーン…と轟くようなスケールの大きさも時に感じます。

唯一無二感の解像度の高さ

中高域はとても伸びやかで見通しがよく開放的です。解像度が非常に高く、繊細で微小な音も逃さず解像する鮮明な音の世界観が広がっています。非常にクリアな音ですね。初めてこの音を聴いた時、耳が覚醒するような感覚に陥りました。豊富な情報量の音が微細な粒となって脳に入ってきます。このヘッドホンで音楽を聴くと、マスタリング時に含まれた消え入りそうな音の味付けを明確に味わうことができます。

また、ダイナミックレンジもとても広く、音の強弱が明確に拡張されているのを感じます。
まさに解像度の鬼です。

官能的なボーカルとアタック感

また、ボーカルはやや近めですがリップの質感を感じます。ダイアナ・クラールなどのボーカルをしっとりと、そして湿度の高い官能的な声で聴かせてくれます。

音の立ち上がりは鋭く立ち上がりアタック感が強いです。逆に立ち消えはゆったりとした余韻を残して消えていきます。これは美しいです。「無の音」を気品高く演出します。

明瞭な分離感で新たな音の発見

音の分離は非常に明確です。
今まで気づかなかった一つ一つの楽器の音が濁りなくリアルに聴こえ、新しい音の発見があります。これには感動しました。定位感を生々しく感じることができ、サントラなどではあちこちから音がなりサウンドクリエイターの意図する明確な楽器の位置感を感じ取ることができます。

特に久石譲のサントラなどでは360度うねる様な定位の立体感を感じ、まさに音のシャワーを全身で浴びるような体験ができました。

但し激しいロックとかですと、とたんに分離と定位が崩れ音が団子になって聴こえるような感じでちょっと煩いです。ここは得手不得手がありますね。※バランスケーブルの導入でだいぶ良くなりました。

平面磁界の音場の広さは?

また、平面磁界の特徴である音場ですが、皆さんはかなり広いと感じているようで楽しみにしていたのですが、確かに広いのは広いですがナチュラルで美しく響く広さだなと。実感としてはAKG K712 Proの延長線上かなぁというのが正直な感想です。(AKG K712でも十分に広いのですが)平面磁界というトライによる異次元の音場を期待していましたので、ちょっと妄想が膨らみすぎたなと反省。

音源によってはノイズも…

また、何故か特定の音域ではカリカリ感と、チリチリとノイジーな感じがあります。また、時に高音域が歪み、耳に刺さります。これはヘッドホンが原因というよりも、どうやらAUDIRVANAと連携しているストリーミングサービスの「qobuz」の音源が問題かも知れません。

AUDIRVANAで波形を見ますと、音波がピークにベタっと張り付いているんですね。なのでクリップを起こしているのかなと。qobuzの音源はカマボコ状の波形の音源が多いので、これはどうにかして欲しいです。いくら環境を整えても、元音源が悪いとどうにもなりません。どちらが原因かの判断は難しいですが、Apple Musicで聴く限りはクリップしないので、音源か、再生アプリか、ヘッドホンの特性か何れかになります。

音質の総評

ナチュラルな音場の広さ、驚きの解像度の高さがこのヘッドホンの真骨頂で、ポップス・JAZZ・クラシック・サントラなどを聴く人にとても向いていると思います。アニソンもいいですね。低域が信条のEDMやダンスミュージックなどはやや分析的な音になりがちかも知れませんが、それでもスピード感とキレのある低音で楽しく聴けると思います。

HIFIMAN ANANDA NANOを聞いた後にAKG K712 Proを聴いてみましたが、全体的にフラットで線の細さを感じます。
あくまでANANDA NANOに比べての話ですが、それくらいの差が一聴して分かります。

また、私はリケーブルで音が変わるのをあまり信じてなかった人なのですが(ピュアオーディオでの経験)、付属のアンバランスケーブルからバランスケーブルにリケーブルにしてFiio K7に繋ぎ聴いたところ、かなり音が変わりビックリしました。

具体的には音が太くなり、分離・定位が向上し、立体感が増したことです。とにかく音楽がパワフルでエネルギッシュなんですね。

聴く度にハッと新しい音の気づきの体験をさせてくれるヘッドホンです。(まだエイジングで伸び代があるのかも知れません)

HIFIMAN ANANDA NANOの長所

短所にも書きましたが、ハウジングが大きく耳をスッポリ被さるので長時間の着用でも耳が全く痛くなりません。

また、メタルが至るところに使用された本製品はとても質感が高く、所有する喜びを満たしてくれます。

決して安い買い物ではありませんでしたが、今どきのヘッドホンからするとミドルエンドの価格帯に位置するHIFIMAN ANANDA NANOは、まだ見ぬ音の世界を見せてくれます。本当にハッとさせられる音の瞬間がこのヘッドホンにはあるんです。

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HIFIMAN ANANDA NANOの短所

長所にも書きましたがハウジングがとても大きいです。AKG K712 Proと比較しても縦に一回りデカいです。頭に乗せる時、ガバッと開いて被せる感じで何気に大雑把な感じは好きではないです。

また、予想以上に音漏れが激しいです。まるでハウジング自体が小型スピーカーであるかのように音がダダ漏れします。AKG K712 Proの倍は漏れているイメージです。

あとはデザインでしょうか。私はあまり気にならなかったのですが、特徴的なその見た目は好みが別れそうです。

まとめ

まぁまぁな部分もありましたが、音質がそれらをどうでも良くする程の素晴らしいクオリティで素直に感動しました。音場も広いのですが、特に音の粒立ちや解像度の高さはさすが平面磁界ならではの実力だなと感じました。

HIFIMAN ANANDA NANOは実売では7万5千円台で販売しているところもあるので、コスパが良くハイエンドな音を体感したいという人にはHiFiMANのヘッドホンはオススメです。

私は思うのですが、HiFiMAN以外にもSOUNDPEATS やKZ、SIVGA、S.M.S.L、Fiioなど中国には実力派のオーディオブランドが多数あり、侮れない存在感を放っているなと感じています。今後もどんなガジェットが産まれるのか楽しみにしています。

総合評価

総合評価:★4.5
価格:75,699円(2025年5月現在)

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