先日のAKG K812とK702の比較レビューで思ったのが、USB DACがボトルネックになっているのではないかと言うこと。
15年前のUSB DACなので前回の比較検証を行いながら、そろそろ引退してステップアップしたいなと思い、色々と悩んだ結果買い替える事にしました。DAC選びも悩みましたが、性能に対してコスパの評判がとてもいい「Fiio K7」を購入しました。
購入ポイントはバランス出力を備えており、将来的にさらなる音のグレードアップが期待できるのが楽しみの一つなので訴求力がありました。という事で早速レビューしてみたいと思います。
第一印象

すんごいスルスル滑る外箱です。
デザインは凝っていて特色も存分に使われており、高級感はありませんが、テクノ的なグラフィックで期待感を煽ってくれます。

付属品は本体と電源ケーブル、変換プラグ、そしてUSBケーブルです。
デザイン

ボディはアルミニウムに包まれており、ブラックのフロントフェイスと相まって質感の高さを感じさせます。全体的なデザインは垢抜けており、購入の満足度を高めてくれます。
カラーは希少なレッドで、デスクに置くとそれなりに雰囲気を高めてくれます。
電源はボリュームノブを回すとONになり、ホイール部分のLEDが点灯します。この演出はとても綺麗で、無機質なDACが空間に馴染む居心地の良さを演出します。
サイズはmx-1に比べれば割と大きいですが、デスクに置けないことはないサイズです。
オリジナリティ

「デュアルDAC × THX AAA」の贅沢仕様
価格帯は約3万円半台というミドルクラスながら、旭化成のハイエンドDACチップ「AK4493SEQ」を左右に1基ずつ=完全デュアル構成という贅沢な仕様です。
さらに、ヘッドホンアンプ部分は通常上位機にしか載っていないTHX AAA 788+回路を搭載しています。
THXは映画の音響にも使われている歴史あるブランドで、そのブランドが作ったヘッドホンアンプなので期待が膨らみます。
普通ならこの仕様、5〜6万円台クラスのDACに入ってくる内容なんですね。
Fiio K7は、価格破壊DACアンプとして頭ひとつ抜けたコストパフォーマンスです。

デスクトップ向けに特化した実用性と美しさの両立
背面にUSB-B、光、同軸を備えた完全据え置き設計。電源は安定動作に適した外部ACアダプター式(12V)
正面のRGBライトリング付きボリュームノブはインジケーターも兼ねます。
操作性

ダイヤルの手触りは悪く有りません。しっとりとした感じです。しかしもう少しネットりとした回し心地で高級感を演出しても良かったのではないかと思います。
フロントインターフェースには左側から、
- インターフェエースボタン:入力の切り替え/USB、OPT、COAX、LINEの順に切り替えができます。
- 2. GAINスイッチ:出力ゲイン(音量の初期レベル)の切り替え/H(High):インピーダンスが高いヘッドホン向け。出力が強くなります。L(Low):感度の高いイヤホン向け。ノイズを抑えられます。
- 3. OUTPUT スイッチ:出力モードの選択(背面のライン出力かフロントのヘッドホン出力か)/PRE(プリアウト):音量調整付きのライン出力、PO(ヘッドホン出力):前面のヘッドホンジャックに出力、LO(ラインアウト):固定音量のライン出力(アンプなどに接続時に使用)
- 4. 大型ボリュームノブ(LEDリング付き):全体の音量調整(電源兼ねる)/サンプリングレートによってLEDの色が変わります。
・青色/〜48kHz
・黄色/48kHz〜192kHz
・白色/192kHzまたはDSD
フロントの切替スイッチは少し硬いですがカチカチと子気味良い操作感です。右側には上部にシングルエンドの6.35mm端子、下部に4.4mmのバランス端子があります。どちらもカチっとした刺し心地です。何気にフルバランスに対応しており、ヘッドホンさえバランス化されたものであればその実力をいかんなく発揮することが可能です。
あと使用中は本体に結構熱を持ちます。電気アンカーかなと思うくらい。本体を包んでいるアルミは放熱の意味合いもあると思いますので、本体上部には物を置かないように注意しましょう。
音質比較に用意したモノ
音質を比較するために用意した機材とソフトを紹介します。

ヘッドホン:AKG K812
AKGのリファレンスモニターヘッドホンのフラッグシップ。
開放型にも関わらずとても音がふくよかで音場が広く、解像度の鬼のようなヘッドホン。リファレンスモニターと名乗るにはあまりにも音が楽しいです。

音楽アプリ:AUDIRVANA(オーディルヴァーナ)
ビットパーフェクトで音源送信が可能で、アップコンバート機能なども備えています。AplpeMusicと併用していますが、このアプリを使用してから音質に対する考え方が変わりました。基本的にはマニア向けのアプリなのですが、実際はそんな事はなく操作は簡単でかなり細かいチューニングが出来るのでお気に入りです。AppleMusicと比較して音質の違いがハッキリしていて、一度この音を聴くと元に戻れません。
…話しを戻して。今回は24bit/96kHzの音源で聴き比べてみようと思います。
音質の比較レビュー


Fiio K7と今まで長い間使ってきたUSB DAC「Audinst HUD-mx1」の音質の比較をしてみたいと思います。スペック的には以下の違いがあります。
項 目 | Audinst HUD-mx1 | Fiio K7 |
---|---|---|
発売年 | 2010年頃 | 2022年 |
DACチップ | Wolfson WM8740 | AKM AK4493SEQ×2(バランス構成) |
アンプ構成 | OPA2604,TPA6120A2 | THX AAA 788+ ×2(バランス構成) |
対応サンプリングレート | 最大 24bit / 96kHz | 最大32bit / 384kHz、DSD256 |
出力端子 | RCA,3.5mm光デジタル、6.3mmヘッドホン | RCA、4.4mmバランス、6.3mmシングルエンド |
入力端子 | USB、光デジタル、同軸 | USB、光デジタル、同軸 |
バランス出力 | なし | あり(4.4mm) |
ヘッドホン出力パワー | 約150mW(32Ω) | 最大2000mW (32Ω •バランス) |
サイズ・重量 | 小型・軽量(約260g) | やや大型(610g) |
特 徴 | 当時としては高音質 | ハイレゾ・バランス対応・ハイパワー |
以下の3曲で比較してみたいと思います。いずれも24bit/96kHzです。
・雪の華/中島美嘉
・Automatic/宇多田ヒカル
・激!帝国華撃団/中川翔子
雪の華/中島美嘉
Audinst HUD-mx1
音場の広がりをまず感じます。ボーカルは艶々として、情感に訴える音質。
音圧もしっかり出ていてダイナミックで、これ単体で聴いたらまだまだ現役でいけてしまうのではないかと思うほど。滑らかなスピード感で音楽が楽しいです。
Fiio K7
音圧がまず違います。ズンと全体の音が前に出てくる感じ。この差は圧倒的で一聴して違いが分かるほど。そしてボーカルがとても艷やかで、吐息の漏れすら逃さない。低音も非常に良く出ています。音場がHUD-mx1と比べるとかなり広いです。今まで気づかなかった音を拾い、音数がこんなに豊かな名曲だったんだと気づかせてくれます。K812の音質の底を見せてくれます。
Automatic/宇多田ヒカル
Audinst HUD-mx1
キリリとタイトに締まった低音が印象的。そして広い音場で空間性を感じさせる音楽に仕上がっています。ボーカルを中心とした定位の良さが感じられ、音がポンポン跳ねているような印象を受けます。
Fiio K7
これも雪の華同様、まずは音圧に圧倒されます。豊富な情報量の音に包みこまれるような圧です。そして音場が圧倒的に広いです。広いのですが、音が散り散りにならず、ちゃんと主張してくる。そしてその主張は鬱陶しいものではなく、しっかりと分離して聴きやすくまとまっています。低音も増強されていますが、ボワ付くことなくタイトに締まっています。この曲はまるで別の音源かと感じるほどに差がありました。
激!帝国華撃団/中川翔子
Audinst HUD-mx1
ボーカルが少しヴェールがかった感じで一枚幕に覆われるイメージ。音も少し奥に引っ込んだテイストに感じます。
音から感じられる感動的な要素があまりありません。のっぺりと平坦な音。これはマスタリングの問題でしょうか?
Fiio K7
凄い元気な音が出てきました。やはり音圧が全く違いますね。ボーカルもクッキリとしており、各楽器も立体感のある定位で音の粒立ちもとても良いです。マスタリングの問題かと思いましたが、どうも違いますね。HUD-mx1側の得手不得手の問題でしょうか?スピード感もありノリがとても良いです。
総 評

Fiio K7、ヘッドホンの性能もあってか非常にクリアで解像度が高く、音場の広さが魅力的でした。しかし確かに音質に大きな違いがありましたが、だからといってFiio K7を聴き終わった後でHUD-mx1の音が聴けない、なんてことはありませんでした。
これはヘッドホンの性能も由来しているかなと思われます。2つのDACを比較するにはAKG K812はちょっとオーバースペックだったのかもしれません。
しかしFiiio K7は一段クオリテイの高い音を叩き出してくれました。音のまとまりが良く、音楽が美しく聴けるUSB DACです。
これから長い付き合いになりますが、大切に使っていこうと思います。